クロムクロ 第23話「雪に唄う蛙」感想 決戦前だからこそいつもと変わらぬ日常を

ムエッタに共に戦って欲しいと頭を下げるケンちゃんが清々しい。
決戦前に今まで描いてきた日常を見事に収束させてきましたね。

破滅と絶対支配をもたらすエフィドルグの本隊がゲートを通っていつ現れるかもしれない中、先生は先生らしく、そして生徒たちは生徒たちらしく過ごすのは、厳しい自然に揉まれる中で代を重ねてきた日本人の死生観に通じるものがありますね。

どんな状況でも未来を信じ、ただその日を当たり前に過ごすのはかなりキモの座った覚悟がいると思いますが、エフィドルグとの戦いについての詳細を知らなかった生徒たちが、ムエッタから大艦隊が地球に攻めてくると聞いても特に取り乱したりせず、合宿の時にみんなの話題になった映画作りを始めたのは、感慨深くも面白いと思いました。

そして撮影が始まってから、謎の覆面外人やキルビルの格好をした神美の乱入で、場は混迷を極める騒がしさに包まれてしまいましたが、それを楽しそうに見ている剣之介の瞳が優しさでいっぱいという感じでしたね。

ムエッタも自分が今まで見たこともない日常というものが目の前に広がって、自分の存在や状況に悩んでいた気持ちが解れたんだと思いますが、二人並んで由希奈たちの様子をみていた彼らが、何かを守るために戦おうとひとつの気持ちを持てたのは、いかにも決戦前のエピソードという感じでグッと来ました。

雪姫の民を守って欲しいという気持ちを思い出した剣之介。
時を超えて今ここに居る彼が、同じく本来ここに居なかったかもしれないムエッタに向かって深々とお辞儀しながら共に戦って欲しいと頼んだのは、姫から託された想いと自分の想いがひとつに重なったからではないでしょうか。

それは他でもない時間の漂流者である自分を受け入れ、将来のことを考えて下さいと言ってくれた由希奈や、学校や黒部の人たちとの出会いがあったからですね。
そしてムエッタも僅かな時間であったとしても、由希奈や敵である自分を助けてくれた赤羽との出会いが、彼女の進む道を照らしてくれたんだろうと思います。

次回から決戦が始まるのは間違いありませんが、その前に今まで描いて来た日常や剣之介と由希奈の絡みを、今できることをする、そしてみんなを守りたいというひとつのところへ纏めたのは見事な構成だったのではないでしょうか。
正直言って序盤中盤とバトルパートと日常パートのバランスがどうなのかなぁと感じるところもありましたが、全ては生徒たちの喧騒を優しく見守る剣之介とムエッタのシーンのためだったように思います。

あとはエフィドルグとの闘いがどうなるかと、もしそれを切り抜ける事ができたとしたら、剣之介とムエッタがその後どんな風に生きていくのかが気になるところですが、先ずは作戦を立てる大人たちの活躍を楽しみに、次回を待ちたいと思います。