2014
09/26
金

幸が鞄に入れていた「押絵と旅する男」からグラスリップを紐解いてみました。
江戸川乱歩の幻想的な短編作品として知られる「押絵と旅する男」。
作者乱歩の趣味嗜好を楽しみながら、非現実の世界に引き込まれていくのが面白い作品ですが、
元々創作物というものは、作り手独自の味わいを楽しむものでもあるので、このグラスリップも原案の西村監督の色を自分なりに楽しんで視聴できたと思います。
中でも仲間たちの恋の紆余曲折が現実的に流れるのと並行して、非現実の世界が説明少なに描かれていくアンバランスさが面白く、
最終話の硝子玉が流星となって夜空に飛び散っていく映像や、登校中の透子が駆の声を聞く締めくくりは幻想的な余韻を含ませて、文芸的なアプローチを今のアニメにしていたことに、監督はチャレンジャーでもあるし、つくづく創作畑の方なんだなというのを感じました。
わかりやすい恋愛劇を楽しむのもいいですが、グラスリップのような作り手の趣味嗜好、それを表そうと挿入される演出に工夫を凝らした場面を楽しんでみるのも面白いですね。
そんなことをちらと映し出された幸の本から感じ取りましたが、演出面でも気になる事が多くある作品でした。

上から見た演出のワンカットが多かったのは、ジョナサンをはじめとする鳥たちの視点でもあったのでしょうか。
アニメなので、映像の語りべとしての役割りを彼らが担っていたように思います。
街並みが上空から描かれているシーンが多々見られたり、透子や駆の家、カゼミチの視点なども上から見たものが多用されていたと思います。
最後の透子が振り返ったところもやや上から描かれていますが、普段はジョナサンが透子から描かれていたり、電線に止まったスズメも幸と祐から見られる立場にいますね。
しかし、いつも見られているジョナサンから、逆に透子がどんな風に写っていたか、そして美術室の駆のところに透子を誘導したりと、彼らの方からの視点や思いの風味も感じます。
そして止め絵の演出に必ずと言っていいほど差し込む光が用いられていたのは、硝子玉を覗く方向で、光の加減で見える感じが左右される事があることと何処かで重なっているのも感じ、幻想的なテイストを増す役割りを果たしていたと思います。
そしてこの別視点や別方向から見るというのが、最後に駆が街を離れたのか、それとも居続けて学校に入学して来たのか、そこに大きく絡んできていると思いました。
見る人と見方によって、駆がどうしたのかがどちらにも捉えることができる。
そこが面白いところで、幻想テイスト濃いめに言えば、彼が透子に好きとか、一緒に居たいとかはっきり告白するのは重要な事ではなく、
駆のように透子が彼の声を聞くようになったことから、目の前に彼が居ようが居よまいが、2人は深く結びついたことが大切なことなんだと思いました。
ジョナサンが映像の語りべとしての役割りを持つ時があったり、幸が作り手の意図のヒントを示していく部分もあって、ストレートな表現が主流となったアニメに、文芸的なアプローチをした面白い作品でしたね。
場面場面の演出もいろんな方向から解釈ができる見応えがあったと思います。
個人的な解釈や感じたことを書いてきましたが、ピーエーワークスさんでなければ、映像にすることにが難しかったのは感じますね。
これからもいろんな作品を世に出してほしいと思うし、アニメ好きの一人としてできる限り大事に見て行きたいと思いました。

TB http://natusola.blog105.fc2.com/blog-entry-2955.html
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